世間は夏休みらしい。ハハ......(そろそろ疲れました...まだ半年以上続くと思うととてもつらい)
ということで本題!
お題
がの有理数倍であるならば,が取り得る有理数の値は有限個に限られる.
証明
とりあえずはチェビシェフ多項式を持ってきます.
チェビシェフ多項式
を,漸化式 $$ T_0(x)=1,T_1(x)=x,T_{n+1}(x)=2xT_{n}(x)-T_{n-1}(x) $$ で定まる多項式からなる列とする.このとき,を番目のチェビシェフ多項式という.
それでもって,こいつらを全部2倍します.
$$
2T_0(x)=2,T_1(x)=2x,2T_{n+1}(x)=2x\cdot2T_{n}(x)-2T_{n-1}(x)
$$
そうしたら,をあらためてに,をあらためてに置き換えると,
$$
T_0(x)=2,T_1(x)=x,T_{n+1}(x)=xT_{n}(x)-T_{n-1}(x)
$$
が完成します.この漸化式,実はを代入してみるとを満たす数列になっています.
(証明)帰納法による.
では,
.
では,
.
,での成立を仮定すれば
から,でも成立するので,0以上の整数でが成立する.
わざわざチェビシェフ多項式をいじってこの形にしたのは,これで定義される数列のは帰納的に次の整数係数の多項式になってるんですけど,この次の項の係数を常に1にしておきたかったんですね.つまり,は,整数を使って,
$$
T_n(x)=x^n+a_{n-1}x^{n-1}+a_{n-2}x^{n-2}+\cdots\cdots+a_2x^2+a_1x+a_0
$$
と表せるわけです.まあなんでこんなことしたかはあとで分かると思います.とりあえず,これで下準備は終わりました.さて,本題に取り掛かろうといったところ.
がの有理数倍の条件から,として,
$$
\displaystyle \theta=\frac{q}{p}\pi
$$
と表せます.これで表せるは0以上の数ですが,関数は偶関数なので,の部分だけで考えちゃってもいいわけです.
ここで,なので,を考えると,
$$
T_p(2\cos\theta)=2\cos p\theta=2\cos q\pi=2(-1)^q
$$
となります.また,
は,整数を使って,
$$
T_p(x)=x^p+a_{p-1}x^{p-1}+a_{p-2}x^{p-2}+ \cdots\cdots +a_2x^2+a_1x+a_0
$$
です.さて,ここでの定数項の値に注目します.というのは,に等しいので,チェビシェフ多項式をいじったやつにを代入してやれば定数項に関する情報がわかります.
$$
T_0(0)=2,T_1(0)=0,T_{p+1}(0)=-T_{p-1}(0)
$$
これから,帰納的に
$$
a_0=T_p(0)=
\left\{
\begin{array}{l}
0\ \ (p\equiv1,3) \\
2\ \ (p\equiv0) \\
-2\ \ (p\equiv2)
\end{array}
\right.
\pmod{4}
$$
となります.以下,4の剰余類で場合分けしていきます.
の場合
なので, $$ T_p(x)=x^p+a_{p-1}x^{p-1}+a_{p-2}x^{p-2}+ \cdots\cdots +a_2x^2+a_1x $$ として,これを代入すれば $$ T_p(t)=t^p+a_{p-1}t^{p-1}+a_{p-2}t^{p-2}+ \cdots\cdots +a_2t^2+a_1t $$ です,また $$ T_p(t)=2(-1)^q $$ なので, $$ t^p+a_{p-1}t^{p-1}+a_{p-2}t^{p-2}+ \cdots\cdots +a_2t^2+a_1t=2(-1)^q
$$ $$ \therefore t^p+a_{p-1}t^{p-1}+a_{p-2}t^{p-2}+ \cdots\cdots +a_2t^2+a_1t-2(-1)^q=0 $$ をみたします.ここで,はについての整数係数多項式 $$ \therefore x^p+a_{p-1}x^{p-1}+a_{p-2}x^{p-2}+ \cdots\cdots +a_2x^2+a_1x-2(-1)^q=0 $$ の有理数解であるといえるので,整数係数多項式の性質 $$ x=\frac{-2(-1)^qの約数}{t^pの約数} $$ を用いることで,の取り得る値の候補は $$ t=2\cos\theta=\pm1,\pm2 $$ $$ \therefore\cos\theta=\pm\frac{1}{2},\pm1 $$ まで絞られます.このときに,はじめに定めたの条件に合致する具体的な値が存在していればいいわけですが,- とすればなので
- とすればなので
- とすればなので
- とすればなので
となって,いずれもOKです.
の場合
です.また,はをみたす,つまり互いに素なのでは奇数です.よってがいえます.よってにを代入したものは $$ T_p(t)=t^p+a_{p-1}t^{p-1}+a_{p-2}t^{p-2}+ \cdots\cdots +a_2t^2+a_1t+2 $$ と $$ T_p(t)=-2 $$ をみたすので,これらから $$ t^p+a_{p-1}t^{p-1}+a_{p-2}t^{p-2}+ \cdots\cdots +a_2t^2+a_1t+2=-2 $$ $$ \therefore t^p+a_{p-1}t^{p-1}+a_{p-2}t^{p-2}+ \cdots\cdots +a_2t^2+a_1t+4=0 $$ となります.ここで,はについての整数係数多項式 $$ x^p+a_{p-1}x^{p-1}+a_{p-2}x^{p-2}+ \cdots\cdots +a_2x^2+a_1x+4=0 $$ の有理数解であるといえるので,ここでもまた整数係数多項式の性質を用いると, の取り得る値の候補は $$ t=2\cos\theta=\pm1,\pm2,\pm4 $$ $$ \therefore\cos\theta=\pm\frac{1}{2},\pm1,\pm2 $$ まで絞られます.ここで,この場合に適するの組を調べてみると- であることより,とはなりえない.
- のときは,なので,,つまりが互いに素の条件もとではであり,不適.
- のときは,が互いに素の条件のもとではとならなくてはいけないので不適.
となって,該当するものは存在しませんでした.
の場合
は互いに素なので,は奇数です.また,このとき,は素因数にを1つしか含まないので,(は奇数)とおくことができます.すると,がいえます.ここで,を考えれば,場合分けの1.で考察した場合に帰着するので,取り得る値の候補は $$ \cos\frac{q}{m}=\pm\frac{1}{2},\pm1 $$ に限られます.ここで,について考えれば, $$ \cos\frac{q}{p}\pi=\cos\frac{1}{2}\frac{q}{m}\pi=\pm\sqrt{\frac{1+\cos\frac{q}{m}\pi}{2}}=0,\pm1,\pm\frac{1}{2},\pm\frac{\sqrt{3}}{2} $$ $$ \therefore \cos\theta=0,\pm1,\pm\frac{1}{2},\pm\frac{\sqrt{3}}{2} $$ が取り得る値の候補になりますが,明らかには無理数なので不適です.
これを除いて,残りについて,場合に適するの組を調べてみると- のときは,なので,,つまりが互いに素の条件もとではであり,不適.
- のときは,が互いに素の条件のもとではとならなくてはいけないので不適.
- のときは,とすればなのでとなって確かに適する.
ということで,以上の1. 2. 3. をふまえれば,がの有理数倍であるときに,が取り得る有理数の値は $$ \cos\theta=0,\pm\frac{1}{2},\pm1 $$ に限られることがわかりました.
補足など
結果はそうなんだ〜っていう感じでけっこうおもしろいですよね.
この命題の肝は,チェビシェフ多項式をいじったやつの次の係数が1のおかげで,実数係数多項式の性質から簡単に候補が絞れるってことですかねー.いじらずにやっちゃったら2のマイナスナントカ乗とかいっぱい出てきますしねー.
なんか自作で問題を作った時にこれをそのまま題材にしたんですけど,誘導のつけ方が下手すぎて普通の人にとっては解くにも解けない問題をつくっちゃってたんですけどね...