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複素平面上の三角形についての覚え書き

本屋で数オリの本を立ち読みしてて見つけたもの.事実だけ載ってて証明的なソレはなかったので軽くやってみた.ノートにまとめる程でもないのでブログに載せておこうと思ったよ.

お題

三角形ABCがあり,内心をI,外心をO,三角形ABC の外接円と直線AI,BI,CIの交点をD,E,F とすると, うまく複素数a,b,cを選ぶことにより, $$ A(a^2),B(b^2),C(c^2),D(−bc),E(−ca),F(−ab) $$ $$ O(0),I(−ab − bc − ca) $$ $$ 三角形 ABC の外接円 : |z| = 1 $$ とおくことができる.

証明

おおまかな流れ

先に三角形DEFの垂心の複素数を求めて,それが三角形ABCの内心になりうることを示します.以下ではA,B,C,D,E,Fはすべて単位円上の点とします.

三角形DEFの垂心の複素数を求める

使いたいことを先に提示しておきます.

複素座標上の単位円上の異なる3点P(p),Q(q),R(r)によってつくられる三角形PQRの垂心H(h)は $$ h=p+q+r $$ と表される.

オイラー線を考えれば三角形PQRの重心G\left(\frac{p+q+r}{3}\right)であることからOG:GH=1:2なのでH(p+q+r)
ってことなんだけど下で真面目にちょっとやってみます.

PH\perp QRなので,これを複素数の数式として表すと $$ \left(\frac{h-p}{r-q}\right)+\overline{\left(\frac{h-p}{r-q}\right)}=0 $$ これを整理すると $$ h+\frac{r-q}{\overline{r}-\overline{q}}\overline{h}=p+\frac{r-q}{\overline{r}-\overline{q}}\overline{p} $$ ここで,|p|=|q|=|r|=1から\overline{p}=\frac{1}{p},\overline{q}=\frac{1}{q},\overline{r}=\frac{1}{r}なので,
\displaystyle \frac{r-q}{\overline{r}-\overline{q}} = \frac{r-q}{\frac{1}{r}-\frac{1}{q}}= \frac{r-q}{\frac{q-r}{qr}}= -qrであることなどを考慮すれば $$ h-q r \overline{h} = p- {\frac{q r}{p}} $$ となります.*1QH\perp RPについても同様に考えることで連立方程式 {} $$ {\displaystyle \left\{ \begin{array}{l} h-q r \overline{h} = p- {\frac{q r}{p}} \\ h-r p \overline{h} = q- {\frac{r p}{q}} \end{array} \right. } $$ が得られます.これを解くと,*2 $$ h=p+q+r $$ となります.

以上の事実を使えば,p,q,r-bc,-ca,-abに置き換えることで,-bc-ca-abが三角形DEFの垂心であることがわかります.

三角形DEFの垂心は三角形ABCの内心

お題が言ってるのは以下の図が成り立つということですが,

f:id:potaxyz:20181223183957p:plain:w300
三角形の角度の関係

ここまでではD,E,Fを設定してきたのでA,B,Cを決定していきます.とりあえずAを決めればB,Cは対称性から証明できそうです.

ということでAの複素数をとりあえずzとおいて,AD\perp EFから, $$ \left(\frac{-ab-(-ca)}{-bc-z}\right)+\overline{\left(\frac{-ab-(-ca)}{-bc-z}\right)}=0 $$ $$ \frac{-ab+ca}{-bc-z}+\frac{-\overline{a}\overline{b}+\overline{c}\overline{a}}{-\overline{b}\overline{c}-\overline{z}}=0 $$ $$ (-ab+ca)(-\overline{b}\overline{c}-\overline{z})+(-bc-z)(-\overline{a}\overline{b}+\overline{c}\overline{a})=0 $$ 共役の関係からバーを取って $$ (-ab+ca)\left(-\frac{1}{bc}-\frac{1}{z}\right)+(-bc-z)\left(-\frac{1}{ab}+\frac{1}{ca}\right)=0 $$ abczをかけて $$ (-ab+ca)(-az-abc)+(-bc-z)(-cz+bz)=0 $$ これを整理すると $$ z^2+(bc-a^2)z-a^2bc=0 $$ $$ (z-a^2)(z+bc)=0 $$ z\neq -bcなので,z=a^2となって,A(a^2)と分かりました.同様にして,B(b^2)C(c^2)も分かります.

以上より証明が完了したということになります.

*1:一般に,この式の形z-b c \overline{z} = a- {\frac{b c}{a}}は,bcを通る直線の垂線であるもののうちaを通るものを表します

*2:連立方程式を解くのにクラメルの公式という便利な道具があるので使わせてもらうとh=\frac{
\left|
    \begin{array}{l}
     p- {\frac{q r}{p}}\ \ \ -qr \\
     q- {\frac{r p}{q}}\ \ \ -rp
    \end{array}
 \right|
}
{
\left|
    \begin{array}{l}
     1\ \ \ -qr \\
     1\ \ \ -rp
    \end{array}
 \right|
}
=\frac{-p^2r+qr^2+q^2r-pr^2}{-rp+qr}=\frac{-p^2+q^2-pr+qr}{-p+q}=p+q+r